「緊張」を「ワクワク」に変えて。伊集龍二、驚異的なスピードで進化する“未完の大器”が挑む初めてのアジアカップ

「緊張」を「ワクワク」に変えて。伊集龍二、驚異的なスピードで進化する“未完の大器”が挑む初めてのアジアカップ

1年前、試合後のアリーナの片隅で黙々と荷物を運び出していた青年が、今、アジアの頂点を決めるピッチに立とうとしている。

名古屋オーシャンズの伊集龍二。188cmという恵まれた体格と、スポンジのような吸収力で代表の座まで駆け上がった「未完の大器」は、かつての内気な緊張を、自信という名の高揚感へと塗り替えた。守備の要でありながら攻撃の起点ともなる新たな才能の現在地。


今シーズン、驚くほどのスピードで頭角を表す選手がいる。名古屋オーシャンズの伊集龍二だ。昨シーズンまで名古屋のサテライトに所属していた伊集とは、試合後に会場外に荷物を運び出すところに何度も出くわし、時には世間話を交わした。それから1年も経たずにフットサル日本代表の活動で何度も取材をすることになるとは知らずに。

今シーズン、トップ昇格を果たした伊集はJ1・名古屋グランパスの下部組織でプレーをした経験があり、身長188cmと恵まれた体格を持つ。シーズン当初は20歳の青年らしい、はにかんだ笑顔も見せていたが、サポートメンバーから急遽追加招集を受けたアジアカップ予選のあたりから、明らかに表情が変わってきた。名古屋ではスターティングメンバーに入り、代表ではチームから唯一、昨年12月のクロアチア遠征に参加した。そういった様々な経験を、驚くべきスピードで吸収している。もちろん、荒削りで発展途上な部分もあるが、それらを補うポテンシャルの高さが魅力だ。持って生まれた骨格など、努力では変えようのない体格を持ち合わせ、足の長さを生かした守備が攻撃の起点となる。日本が待ちわびていたフィクソかもしれない。

本人も「ピヴォを止める」という役割を担い、反転されそうになったら足を出してカウンターに繋げるなど、シームレスに攻撃に切り替わるよう意識をしているようだ。トップ昇格後、初めてスタメンで起用された第4節のしながわシティ戦では開始からわずか30秒でゴール。第17節からは3試合連続でゴールを決めるなど、攻撃面でも成長を見せる。

アジアカップ予選では「CKの出しどころの精度を高めたい」と話した翌日に、伊集のCKから得点が生まれた。今日の前日練習でも、伊集がピンポイントで蹴り出すパスが日本の得点への道筋を示しているようだった。そんな伊集がフットサルを始めたときから目標にしているのが、当時名古屋に所属し、フィクソながら得点も量産していたオリベイラ・アルトゥールだ。奇しくもアジアカップ予選への出場は、アルトゥールの負傷離脱により転がり込んできた。そうして掴み取ったチャンスを着実にものにしながら、ステップアップをしている。

「東海リーグでも緊張していた」と話すほど、あがり症のはずだったが、いよいよ迎える本番を前に「かなり大きな会場で、初めてのアジアカップを戦う。あそこで自分がプレーをするんだと思うと、緊張よりもワクワクのほうが大きい。思いっきりプレーをしたい」と伊集。表情だけでなく、発する言葉にも自信が表れ始めた。次世代を担う守備の要が誕生する瞬間は、すぐそこまで来ている。